最近、「年始状」という表現を目にするようになりました。年始状とは一体何なのか、年賀状とどう違うのか、ご存じない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、年始状を詳しくご紹介したいと思います。
年始状ってなに?
年賀状との違いは?
年始状とは、賀詞を使用せずに送る年始のあいさつ状のことを言います。
年賀状との一番の違いは、「謹賀新年」「あけましておめでとうございます」といったお祝いの言葉がないこと。おめでたい雰囲気をストレートに伝えるには憚られるような時に送るのが、一般的な使い方となります。
いつから使われているの?
年始状が広く使われ始めたのは、2011年に起きた東日本大震災の後からだと言われています。
地震や津波、放射能汚染などの被害に遭われた方々に年賀状を送っていいものか、出すとしたらどのような文面で出したらいいのか、そんな相手を思いやる気遣いから生まれた、新しい年始のあいさつの方法です。
「お祝いの言葉を伝える雰囲気ではないけれど、励ましの気持ちを伝えたい」「お互いの近況を教え合ってつながりを保ちたい」という、災害の時だからこその絆が生み出した、とも言えるかも知れませんね。
いつ、どうやって出せばいいの?年始状の注意点
元旦に届けてもOK?
賀詞を使わずに年始のあいさつをする書状としては、寒中見舞いや余寒見舞いもあります。これらのあいさつ状は一般に松の内(関東では元旦から7日まで、一部関西では15日まで)が明けてから送るものです。
これに対して年始状は、年賀状と同様、松の内に届くように送ることができます。
年賀はがきを使ってもいいの?
注意すべきなのは、年始状には市販の年賀はがきを使わないことが多い点。「年賀」とは、新年の祝賀を意味します。本文でそのような言葉を避けているので、はがき自体も年賀はがきを避けるのがよいでしょう。
ただ、年賀はがきを使いませんから、年始状は年賀状のように特別郵便としては扱われません。早くにポストへ投函してしまうと年内に届いてしまうことも。
そのため、はがき自体はあえて年賀はがきを利用し、元旦に届けるという方法もあります。
年賀はがきを使うか使わないかは人それぞれ。届ける相手がどう受け取るかも考えながら判断するとよいでしょう。
どんなデザインがいいの?
年始状は、かなり融通の利く年始のあいさつ状。「近況報告は控える」というものではないので、例えば子どもの写真を使用したデザインなどもOKです。
とはいっても、おめでたい雰囲気を出さないようにするあいさつ状ですので、あまり華美なデザインは避けた方が無難でしょう。
年始状はこんな時に便利
被災地の方への新年のあいさつ
東日本大震災以降、昨今の日本は毎年のように地震や台風、大雨といった自然災害に見舞われています。このような災害に遭われた方々(被災地の方々)に送る年始のあいさつ状として、年始状はとても重宝されています。
喪中はがきが届いた方への新年のあいさつ
喪中はがきが届いた方に対しては、年賀状を控えるのが一般的だと思います。
しかし本来は、喪中の方が「年始のあいさつは行わない」というだけで、受け取った側が年賀状を出してはいけないという意味ではないのです。
中には、こちらの近況をお知らせしたい方もいらっしゃいますよね。
そのような相手には、お祝いの言葉を使わない年始状を返礼として使用することができます。
喪中はがきの代わりとして
一方、自分の身内に不幸があった場合にも、喪中はがきの代わりとして年始状を送ることも可能です。
ただ一般的には、喪中はがきを出すべきか迷うような場合(普段はあまりお付き合いのない遠い親戚などに不幸があった場合)に使用されるケースが多いようです。また、年の瀬に急な不幸があった場合にも、活用できるかも知れませんね。
寒中見舞いの代わりとして
喪中はがきを出し忘れてしまった方から年賀状が届いた場合などにも、返礼として年始状を送るケースがあるようです。
寒中見舞いや余寒見舞いだと、年賀状をいただいてからどうしてもタイムラグが発生してしまうので、できるだけ早く返礼したい場合には年始状が便利です。
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年始状の代表的な文例は?
賀詞を使用しないあいさつを
漢字のみのあいさつとする場合には、「謹迎新年」「感謝新年」などが一般的です。また、「迎春」「初春」といった「春」という文字を使用してもいいでしょう。
文章のあいさつとする場合には、「謹んで新年のご挨拶を申し上げます」「謹んで年頭のご挨拶を申し上げます」といったあいさつ文が一般的です。よりフランクな間柄の相手には「いかがお過ごしですか」でもOKです。
添え書きの注意点
年始状であっても、ベースとなる要素は「昨年のお付き合いへのお礼」「新年度のお付き合いのお願い」「近況報告」など、年賀状と大きく変わりません。
それらに加えて「相手(の体調や状況など)を気遣う言葉」を入れるのがポイントです。
書式での注意点
年始状でも句読点を避けるのが一般的です。本来、句読点は読み書きに慣れていない子どものための「補助」でした。そのため、正式な書状などで使用するのは失礼にあたります。
また、喪中はがきのように文字を薄墨(グレー)にする必要もありません。
実際の例文をご紹介
それでは実際に、これらのポイント踏まえた例文をいくつかご紹介しましょう。
被災された方への文例
謹んで新年のご挨拶を申し上げます
その後いかがお過ごしでしょうか
心からお見舞いを申し上げますとともに
新しい年が穏やかな年でありますよう心からお祈りいたします
喪中の方への文例
謹迎新年
お静かに新年をお迎えのことと存じます
故人のご冥福を心よりお祈り申し上げるとともに
本年が希望に満ちた年になりますよう心よりお祈り申し上げます
お祝いの言葉をかけにくい方には年始状を!
被災地の方々や、喪中の方に対しても失礼のない年始のあいさつができる「年始状」をご紹介してきました。年賀状とも寒中見舞いとも違って、フレキシブルに使えるのが年始状の特長といえるでしょう。
相手への配慮から、お祝いの言葉はなかなか送りにくいと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それでも、相手を思いやる気持ちや自分の近況など、今後もお付き合いを続けていきたい方には思いを伝えたいもの。
そんな大切な方々に、ぜひ年始状を送ってみてはいかがでしょうか。