今でこそ、新年のご挨拶として広く親しまれている年賀状。もはやお正月の風物詩と言っても過言ではありません。
そんな年賀状がいつから始まって、どんな変化をたどってきたのか、意外と知らないものですよね?今回は、年賀状の歴史についてひも解いていきましょう。
年賀状はいつから始まったの?
新年のあいさつは、平安時代から!
いわゆる「新年のあいさつ」の歴史はかなり古く、平安時代にまでさかのぼります。ざっと見積もっても、1000年の歴史があるということになりますね。平安時代には、貴族の間で新年のあいさつをする「年始回り」という風習がありました。もちろん、近隣に住む人々には直接会いに行くことができますが、遠方の方のところへはそう簡単には行けません。
当時、かの有名な「大化の改新」によって、政治的な伝令書を各地に届けるための制度がすでにありました。そこで貴族たちは、遠方に出向いて挨拶をする代わりに書状を交換するようになったのです。
江戸時代の「飛脚」によって広まる!
貴族の風習だった、書状による新年のあいさつ。これが世の中に広まるのは、江戸時代になってから。この頃には「飛脚」制度が誕生し、物資の移動が一層盛んになっていました。
また寺子屋など教育機関も発達し、一般庶民も文字の読み書きができるようになりました。そのため、手紙のやり取りも従来に比べて飛躍的に多くなったのです。
しかし、江戸時代の年賀状は、必ずしもお正月にやり取りされていた訳ではありません。中には6月に出された年賀状もあったという資料も残っているほど、現在に比べるとかなりのんびりとしていたようですね。
年賀状の登場は、明治時代!
現在のような年賀状が取り交されるようになったのは、近代化の波に乗って郵便制度が誕生した明治時代から。意外と最近のことなのです。当初はまだまだ上流階級の間でやり取りされていたのが主流でしたが、「郵便はがき」の誕生を機に、広く一般市民へと普及しました。
明治32年になると、一部の郵便局で年賀状を特別取扱とするようになり、明治39年には「年賀特別郵便規則」が公布され、全国的に「年賀状」が一般化されました。
一気に身近になった「プリントゴッコ」!
プリントゴッコってなに?
一般に普及した年賀状ですが、それでもやはり、新年のあいさつは大人同士の風習であって、子どもたちには馴染みのないものでした。そんな年賀状が子どもたちの間でも広まるきっかけとなった、画期的な商品を皆さんはご存知でしょうか。それが、家庭で簡単に年賀状が印刷できる「プリントゴッコ」です。
1970年代後半に発売されて以降、世界累計で1,050万台も販売されたという、一大ブームを巻き起こしました。
1枚ずつ手書きする必要がない!
プリントゴッコは、1977年に理想科学工業から発売された、家庭で使用できる個人向けの小型印刷機です。いわゆる「シルクスクリーン」という印刷技術を応用していて、版の上にインクを乗せてプレスすることで、同じ年賀状を一度に複数舞作成することができるようになりました。
もちろん、それまで年賀状といえば一枚ずつ手書きするのが当たり前。プリントゴッコの登場によって、その手間が大幅に省けるようになり、年賀状がより身近なものとなったのです。
自分だけのオリジナル年賀状が作れる!
プリントゴッコの特長の一つに、版画のように一色ずつ重ねていくのではなく、一つの版に何色ものインクを乗せることができるというものがあります。つまり、インクの使い方によって、自分で書いたイラストや文字をカラフルに仕上げることができ、さまざまな個性を出せるということ。「アイデア次第で唯一無二の年賀状が気軽に作れる」と人気に火が付き、プリントゴッコは年賀状作りになくてはならない存在となったのです。
小さな子どもでも簡単に作れる!
実際の作り方もとても簡単でした。小さな子どもでさえ気軽に自分だけの年賀状が作れるという点も、爆発的なブームとなった大きな理由の一つと言えるでしょう。40代以降のパパ&ママならば、一度は子どもの頃に夢中になった覚えがあるのでは?
実は「プリントゴッコ」というネーミングには、当時の理想科学工業の社長さんの「子どもたちに、家庭で印刷ごっこを楽しんで欲しい」という思いが込められていたのだそうです。
プリントゴッコって今でもあるの?
一般家庭でのパソコンや制作ソフトの充実、インクジェットプリンターの普及に伴い、はがき印刷のみに特化したプリントゴッコの需要は徐々に低下していきます。そして2008年6月末に本体の販売が終了し、2012年には消耗品等の販売も完了しました。
今でこそ、誰でも気軽に自分だけのオリジナル年賀状を作成することができますが、プリントゴッコはまさにその先駆けとして、大きな役割を果たしたのです。
年賀状の発行枚数は、ここ15年で減少傾向!
年賀状が現在の形になってから、最も多くやり取りされたのが2004年。実に44億5936万枚を数えたそうです。しかし、2004年をピークに年賀状の発行枚数は年々減少し、2019年には24億21万枚となっているのだとか。
消費税の導入など年賀状の料金そのものが上がっていることはもちろん、企業として年賀状を取りやめるケースが増えるなど、経済的な不況下における意識の変化も要因として挙げられるでしょう。
また、インターネットやSNSの普及に伴い、若い世代での「年賀状離れ」が加速していることも原因の一つと考えられます。
おたよりならではの温かみは、年賀状だからこそ!
古くは平安時代から、1000年もの時を超えて続く新年のごあいさつ。スマホやパソコンの無機質な画面にはない、実際に手で触れることのできる質感や、毎年積み重ねられてゆく厚みは、年賀状でしか味わうことのできないものです。
昨今では、安くてオリジナルな年賀状ができるネット印刷サービスもたくさんありますよね。ぜひこれからも、日本人ならではのあたたかみのある文化として、年賀状が続いていって欲しいですね。